社会活動家で法政大学教授でもある湯浅誠さんをお招きしたこの講演会は、定員を超えるお申し込みがあり、大盛況でした。
豊中市とも縁のある湯浅さん。
内閣府参与の時はよく庄内に来ていたそうです。
湯浅さんは大学時代に友人が関わっていたホームレス支援に参加したことで活動を始めました。
ホームレスは増え続け、家を失って路上に来てしまう前の人が支援に繋がるように考えたのが、アパート入居や就職の身元保証人になることでした。
そうした活動の中で、年齢性別に関わらず大変な状況にいる人たちが見えてきました。
ホームレス問題は貧困問題につながっていたのです。
ではなぜ貧困問題は起こったのでしょうか。
高度経済成長期、日本では正社員の夫に妻と子が扶養されるという「標準的ライフコース」ができました。
「標準的ライフコース」は安定した収入や社会保障といった傘に守られているイメージです。
傘から外れてしまうと一気に不安定になり、何かあると簡単に生活保護まですべり落ちてしまいます。
90年代以降その傘がしぼんで雨に濡れる人が増えて、貧困問題は注目を集めるようになりました。
濡れている人に「傘から外れたのは自己責任」といって終わらせることは、「私には関係ありません」と問題を自分から切り離すことになります。
社会の一員としての責任を放棄していると、いずれ社会は衰退してしまいます。
講演会の後半は大阪市立大学教員の古久保さくらさんを交えて、会場からの質問に答えながら進みました。
働く女性は増えましたが非正規が多く、若年女性は「初職が非正規」もめずらしくありません。
正規の女性も介護や子育てといった理由で辞めざるをえないケースがあります。
ケアを女性が担って男性が正規で働くライフコースがいまだに基準になっているからです。
湯浅さんからは、貧困が注目を集める前から日雇い労働者やシングルマザーは傘の外にいて、特に女性は今も昔も傘から外れてしまいやすいとお話がありました。
問題意識を広げるにはどうすればいいかという会場からの質問に、湯浅さんは関心のない人へ届くようにレパートリーを増やしましょうと答えました。
服を一着しか持っていなければどんな場面でもその服で行くしかありません。
ですが、服のレパートリーがあれば相手や状況に合わせて服を選ぶことができます。
服をたくさん持って、今は関心のない人にも響く言葉や方法を磨くことが大切だということでした。
講演の締めくくりに、すてっぷ登録団体が「すてっぷにあつまれ! かえよう・えがおで・つながって」とメッセージを届けました。
講演会後のサイン会は長い列ができました。
湯浅さんは笑顔でお話をしながらサインされました。
F.K