2017年7月15日土曜日

スタッフおすすめ本『13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル』

13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル』 
山本 潤/著 朝日新聞出版 2017 916

最も安全な場所であるはずの家庭が暴力の現場になり、最も信頼していて良いはずの親が加害者になる。この本は13歳から20歳まで、父親からの性暴力を受け続けた著者が、壮絶な葛藤と闘いながら「私」を取り戻すまで、約30年以上に渡る再生のプロセスを詳細に記した貴重な記録である。

著者は家族と対峙し、時には自分を追い詰めながら、必死でもがいて学び、支援者の手を借り、勇気と知恵をもらいながら回復していく。それは、本文にもあるように、割れた陶器が「金継ぎ」によって再び器として蘇り、以前には無かった味わい深い光を放つかのようである。人は必ず立ち上がることができるということを、著者が身をもって示す姿には、誰もが共感し、心揺さぶられるのではないだろうか。

私が特に印象に残った言葉としては、支援者に伝えたいメッセージとしての「そんなものではない(簡単にわかると思わないで欲しい)」という言葉である。他人である以上、支援者は絶対に当事者の痛みをわかることはできない。支援者はあくまで伴走者であり、本当の回復には当事者自身の力が必要である。そのためには、周囲の様々な人が、この社会全体が、当事者が回復するためのきっかけをあらゆる場所で作り上げる責任があるのではないだろうか。

本著には著者が実際に役に立った経験を元に、「性暴力被害者・サバイバーのためのガイド」として、性暴力とは何かの具体的な理解の方法、被害にあった場合の相談のノウハウや相談先などが章ごとにまとめられており、実践書としての価値も高い。声を上げられない被害者は必ず誰の周囲にもおり、性暴力被害と無縁な人はいない。被害者や支援者は勿論のこと、今までこうした手記に接してこなかった人にこそ、ぜひ手に取って欲しい名著である。

AE